第79回 知の拠点セミナー

第79回 知の拠点セミナー
講演1 「同位体組成が記録する地球型惑星の形成環境」 / 講演2 「スロー地震の発見とその意義」

日時 平成30年10月19日(金) 18時00分~20時00分(※17時30分から受付開始)
場所 東京大学地震研究所1号館2階セミナー室 ※6月から開催場所が変わりました
(東京都文京区弥生1-1-1:アクセスマップ)南北線東大前駅徒歩約5分
プログラム
18:00-19:00
講演1 「同位体組成が記録する地球型惑星の形成環境」

田中 亮吏(岡山大学惑星物質研究所 教授)
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19:00-20:00
講演2 「スロー地震の発見とその意義」

小原 一成(東京大学地震研究所 所長/教授)
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講演1:「同位体組成が記録する地球型惑星の形成環境」

田中 亮吏(岡山大学惑星物質研究所 教授)

写真(講演者)

 地球などの惑星は、原始惑星系円盤内のガスの凝縮によって形成されたダスト(固体微粒子)の付着・衝突によって成長した微惑星が、衝突・合体を繰り返すことにより形成したと考えられています。これらの進化過程の物的証拠を得るためには、隕石などの地球外物質や地球の岩石に記録された情報を読み解き、得られた物理化学的パラメータを論理的に解読することが重要な手がかりとなります。惑星物質研究所では、天然・合成物質から多様なパラメータを精度良く得るため、様々な分析・実験装置を有機的に結びつけた地球惑星物質総合解析システムを構築してきました。本講演では、主に金属と岩石から構成される地球型惑星が、原始惑星系円盤内でどのように誕生・進化したのかについて、隕石の同位体組成を用いた研究例を中心に紹介します。

講演2:「スロー地震の発見とその意義」

小原 一成(東京大学地震研究所 所長/教授)

写真(講演者)

 「スロー地震」という言葉を聞いたことがありますか?2018年6月に房総沖でスロー地震が起き始め、それによる有感地震の発生が予測され実際にその通りになりましたので、記憶されている方も多いかもしれません。では、スロー地震とはどんな現象なのでしょうか。大地震の予測にも役立つのでしょうか。

 スロー地震とは、通常の地震に比べて断層がずれ動くスピードが遅く、微弱でゆっくりした揺れを生じる、あるいは揺れを全く生じない現象です。「ゆっくり地震」、「スロースリップ」などと呼ばれることもあります。海のプレートが陸の下に斜めに沈み込む場所では普段は陸のプレートとの境界が固着して(くっついて)いるため、陸のプレートを引きずり込んで、次第にプレート境界付近に「ひずみ」がたまります。そのひずみが限界に達すると固着がはがれて陸のプレートが跳ね上がり、プレート境界で断層運動が生じます。このとき急速に断層がずれ動くと大地震になり、ゆっくり動くとスロー地震になるのです。ゆっくりの程度はとても幅広く、スロー地震には「長期的スロースリップ」、「短期的スロースリップ」、「超低周波地震」、「低周波微動」など、様々なタイプの現象が含まれています。

 これらのスロー地震は、日本列島に稠密な地震・地殻変動観測網が整備され始めた2000年前後に世界で初めて西南日本で発見されました。その後、想定されている南海トラフ巨大地震の震源域を取り囲むように、様々なタイプのスロー地震が見つかってきました。さらに、世界中、特にプレートが沈み込む環太平洋の各地でも次々とスロー地震が検出されてきました。これらのスロー地震は巨大地震震源域に近接して発生していることから、スロー地震は巨大地震と何らかの関係があることが示唆されます。実際に、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震の直前にもその破壊開始点のそばでスロー地震が発生しており、これが巨大地震の最後の一押しになったと考えられています。

 本講演では、スロー地震の発見の背景と経緯、スロー地震の特徴、巨大地震との関係性などについて、最新の知見を紹介いたします。

 

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