第75回 知の拠点セミナー

第75回 知の拠点セミナー
講演1 「北極海航路の現状とこれから」 / 講演2 「針先で探るナノの世界―走査トンネル顕微鏡による物性評価―」

日時 平成30年6月15日(金) 18時00分~20時00分(※17時30分から受付開始)
場所 東京大学地震研究所1号館2階セミナー室 ※6月から開催場所が変わりました
(東京都文京区弥生1-1-1:アクセスマップ)南北線東大前駅徒歩約5分
プログラム
18:00-19:00
講演1 「北極海航路の現状とこれから」

安部 智久(北海道大学北極域研究センター 教授)
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19:00-20:00
講演2 「針先で探るナノの世界―走査トンネル顕微鏡による物性評価―」

長谷川 幸雄(東京大学物性研究所 教授)
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講演1:「北極海航路の現状とこれから」

安部 智久(北海道大学北極域研究センター 教授)

写真(講演者)

 近年北極海での海氷面積が減少傾向にあることにより、夏季の間に北極を航行することができるようになってきました。北極海を航行すれば、アジアと欧州との距離が従来の南回り(スエズ運河経由)よりも大幅に短縮されるため、輸送が効率化されることが期待されています。  

 ただ、現状で実際に航行する船舶を見てみると、スエズ運河経由よりも航行の数は少ないのが現状です。この理由としては、通年航行ができるわけではないこと、また海氷の中を航行する際には砕氷船の助けを借りることが必要な場合が多いことが挙げられます。

 この一方、将来の北極域への期待は大きなものがあります。北極地域は天然資源が豊富であるといわれており、資源開発の進展は、北極海での航行を大きく増加させる可能性もあります。中国政府は、北極海を経由する航路を一帯一路の一部と考えて、取り組みを強化する政策を最近発表しました。今後は、経済開発や地政学的動きとの関連も出てくると思われます。

 本講演では、上記の事項を背景として、航行実態などをはじめとして、北極海航路の最近の現状をご紹介するとともに、これからの見通しについて、関係する国々の動きも踏まえつつ展望してみたいと思います。

 

   

講演2:「針先で探るナノの世界―走査トンネル顕微鏡による物性評価―」

長谷川 幸雄(東京大学物性研究所 教授)

写真(講演者)

 昨今の材料開発では、物質をナノメートル (nm, 1 nm = 10−9 m)の領域、すなわち原子や分子のスケールで制御するナノテクノロジーの技術が多いに活用されています。物質表面の一つ一つの原子を観察しその位置を自在に動かせる手法として颯爽と登場し、このナノテクノロジーの嚆矢となったのが、今回取り上げます走査トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscopy, STM)です。

 ナノテクの進展とともに、STMもその性能向上が計られ、付随する測定技術の開発も進んで、STMが活用される対象も大いに拡がりました。私が所属する物性研究の分野でも、STMは、物質表面の原子のみではなく、電子の振る舞いをナノスケールで解明する手法として知られるようになり、重要な計測手法となりました。例えば、電気抵抗がゼロになる超伝導の性質も、その性質や分布をナノスケールで明らかにすることができます。最近では、磁気的な性質(スピン)もナノスケールで解明され、新たな物質開発への指針を与えています。

 本セミナーでは、私たちの研究室で10数年にわたり撮り溜めてきたSTM像の数々を紹介し、原子・分子・電子・スピンからなる物性科学のナノの世界にお誘いしたいと思います。

 

 

 

 

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