第63回 知の拠点セミナー

「講演1:非侵襲性高感度医用デバイスのための貴金属材料の作製とその材料評価/講演2:脱細胞化生体組織を用いた『再生工学』の現況と未来」

日時平成29年6月16日(金) 18時~20時00分(※17時30分から受付開始)
場所京都大学東京オフィス
(東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階: アクセスマップ
プログラム18:00-19:00 講演1 「非侵襲性高感度医用デバイスのための貴金属材料の作製とその材料評価」  概要はこちら
 曽根 正人(東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所/未来産業技術研究所 教授
19:00-20:00 講演2 「脱細胞化生体組織を用いた『再生工学』の現況と未来」  概要はこちら
 岸田 晶夫(<東京医科歯科大学生体材料工学研究所  教授)

第63回セミナー 申込ページ (6月14日(水) 16時まで)
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講演1 「非侵襲性高感度医用デバイスのための貴金属材料の作製とその材料評価」
  曽根 正人(東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所/未来産業技術研究所 教授)

貴金属材料は化学安定性,電気伝導性,生体適合性など優れた特性を持つことが知られている。最近では,金材料のMEMSデバイスへの応用が注目され,電解金めっき微小構造体を用いた高感度MEMS加速度センサが東工大の益一哉教授のグループにより提案されている(図1)。これは従来のシリコンベースの加速度センサとは異なり,高密度である金材料を錘に利用したもので,小型かつ高感度な加速度センサを実現することが可能である。この加速度測定の高精度化が実現できるとパーキンソン氏病を代表とする神経性難病の早期診断が可能な非侵襲性医用デバイスが実現する。この高精度化は,金の密度(19.30 g/cm3)がシリコンの密度(2.33 g/cm3)に比べ非常に高いことに起因している。この新しい非侵襲性医用デバイスを実用化するために、益教授を中心とした回路・デバイスグループ、三宅美博教授を中心とした医用システム応用グループ、私を中心とした材料グループで、科学技術振興機構(JST)のCRESTプロジェクトが2014年から実施されている。
加速度センサの構造は大まかには錘とばねから構成されており,加速度センサに使われる金材料,特にばねの部分は塑性変形が起こってはならず,弾性変形のみが許される。従って金材料を加速度センサに用いるためには,金材料が従来の材料すなわちシリコンと同程度の降伏応力を持っていることが理想である。一般的に,金の降伏応力は約55~220MPa程度である。シリコンは2.6GPaであり、金はシリコンの10分の1以下の降伏強度しか持たないことになる。そこで我々のグループでは、電気めっき法を用いた金の様々な強化手法を研究している。一般に金は柔らかいといわれているが、我々の試みにより金めっき材料の降伏強度は1.1GPaを越えることが可能であることを明らかにした(図2、図3)。研究開始時には想像できなかった研究成果であり、理論的な最高強度に近づいている(図4)。この最新の研究成果について紹介する。





講演2  「脱細胞化生体組織を用いた『再生工学』の現況と未来」
  岸田 晶夫(東京医科歯科大学生体材料工学研究所 教授)

「再生医療」の中心要素がiPS細胞などの「細胞」であることは間違いないが、治療技術として考えた場合には、「細胞だけでは足りない(大型臓器再生)」、あるいは「細胞は必要ない(単純組織再生)」という再生医療も存在する。これを実現する新しい考え方が「再生工学」である。再生工学において重要な要素は「(足場)材料」と「プロセス」である。本講では近年、足場材料として注目されている「脱細胞化生体組織」を中心に解説する。脱細胞化生体組織とはヒトやブタなどの生体組織から界面活性剤などを用いて細胞を除去した、細胞外マトリクスで構成された新しい材料であり、欧米ではすでに心臓弁、骨、皮膚、細粉化小腸などが臨床応用されている。
脱細胞化組織に関する基礎研究および臨床応用の範囲が広がるにつれて、脱細胞化組織の生体機能性に注目が集まっている。脱細胞化組織は免疫源となる細胞成分を除去しているので、生体との親和性が高く、また皮膚・血管・角膜などの組織体だけでなく、心臓・肺・腎臓・肝臓など臓器にも適用が可能である。これまでは心臓弁、血管や軟組織補綴物など、主として生体組織の代替品として応用されてきたが、近年では、脱細胞化組織では3次元構造をよく保存されていることを利用して心臓、肺、腎臓などの臓器再生のための足場材料として注目されている。また、創傷治癒を促進する機能の応用研究および人工材料との複合化による新たな機能付与の研究など、多方面にわたる研究が展開されている。 講演では、脱細胞化生体組織の医療材料としての位置づけ、特異的な機能およびそれを用いた新しい再生工学の可能性と展望を紹介する。