第62回 知の拠点セミナー

「講演1:大気を測るレーダー ―大型レーダーによる地球大気研究の紹介―/講演2:パワーレーザーによる極限状態の科学」

日時平成29年5月19日(金) 18時00分~20時00分(※17時30分から受付開始)
場所京都大学東京オフィス
(東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階: アクセスマップ
プログラム18:00-19:00 講演1 「大気を測るレーダー ―大型レーダーによる地球大気研究の紹介―」  概要はこちら
            山本 衛(京都大学生存圏研究所 教授)
19:00-20:00 講演2 「パワーレーザーによる極限状態の科学」  概要はこちら
            兒玉 了祐(大阪大学レーザー科学研究所  所長)

講演1 「大気を測るレーダー ―大型レーダーによる地球大気研究の紹介―」
  山本 衛(京都大学生存圏研究所 教授)

レーダーを使って大気を観測することができます。ただし気象予報で紹介されるような降雨を観測するレーダーではなくて、雲も雨もない大気を測るものです。
レーダーは、電波を使って標的からの「こだま」を測る装置です。強い電波を大気に発射するとごく一部が散乱して戻ってきます。これを使って大気の揺らぎや動き(風速)を測ることができます。1984年に開発されたMUレーダーは、電子制御で電波の向きを変えられるアンテナを特徴としますが、これが世界初であったとして、国際学会であるIEEEからマイルストーン認定をされました。我々は、またインドネシアに赤道大気レーダーを設置して興味深い赤道域の大気を研究してきました。講演では、観測の概要とと成果の一端を示します。最後に、新しいレーダーをインドネシアに建設することを計画していますので、ご紹介します。




講演2  「パワーレーザーによる極限状態の科学」
  兒玉 了祐(大阪大学レーザー科学研究所長)

パワーレーザー技術の革新により自然の新たな姿を探求すると共に、そのポテンシャルを活用することで、物理学や化学といった既存の学理体系に不連続な革新を誘起するとともに、産業イノベーションを切り拓く広範な新技術の源泉として“高エネルギー密度科学”が,世界で精力的な研究開発が行われている。高エネルギー密度科学は量子真空物理学、高エネルギー物理学、宇宙物理学、地球惑星物理学、プラズマ物理学、超高圧固体物理学・化学などの幅広い学術領域を対象としている。さらにレーザー加工やレーザーピーニングといったレーザープロセス、レーザープラズマ粒子加速器、テラヘルツからX線に至る超広帯域高輝度パルス電磁波源、コンパクトコヒーレントX線源、中性子、ガンマ線などの高輝度パルス放射線源.またこれらを利用した核変換やレーザー核融合などの原子力応用、粒子線治療装置などの医療分野、製造産業分野など幅広い応用を対象とした学際性豊かな分野である。
このような中からレーザー宇宙物理学やプラズマフォトニクスなど我が国オリジナルの学問領域も生まれている。高エネルギーのプラズマフォトニックスという概念が高強度光や高エネルギー密度荷電粒子を直接制御する極限プラズマデバイスを実現し、現実的なレーザープラズマ電子加速器の実現や真空量子光学の開拓が期待されている。一方、パワーレーザーの特性を生かし独自技術により1000万気圧の超高圧状態を制御し、巨大惑星の内部状態の模擬や新物質材料創成から新たなプロセス技術の開発など高エネルギー密度物質材料科学の新分野が生まれようとしている。