第42回 知の拠点セミナー

「がんの治療:創薬」

日時平成27年3月20日(金) 17時30分~
場所京都大学東京オフィス
(東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟27階: アクセスマップ
講演者松本 邦夫
金沢大学 がん進展制御研究所 教授)
講演の詳細はこちらでご覧いただけます (Yomiuri Onlineのページを開きます)

1つの抗がん剤の発見によって、がんの撲滅につながったという例はありません。 しかし、グリベックという抗がん剤の出現によって、白血病の一種である慢性骨髄性白血病患者の生存率は飛躍的に向上しました。 グリベックはそれまでの抗がん剤とは異なる「分子標的薬」と呼ばれる抗がん剤です。 グリベックは抗がん剤開発の新たな扉を開け、医学の歴史に残る画期的な医薬となりました。

グリベック発見の背景になったのは、慢性骨髄性白血病の患者の血液細胞でみつかったBCR-ABLと名付けられた異常なタンパク質でした。グリベックはBCR-ABLタンパク質を標的としてピンポイントでその機能を阻害します。 BCR-ABLの発見後も、正常細胞をがん細胞に変貌させる異常な遺伝子・タンパク質が多数発見されてきました。 その結果、それらの異常な遺伝子・タンパク質をピンポイントで阻害する抗がん剤(分子標的薬)が次々に登場しています。

治療のために処方された抗がん剤がどのようにがん細胞の増殖を止めるのか。 患者、家族の立場で少しでも理解を深めたいと思う人は少なくありません。講演では、がんのこと、遺伝子のこと、医薬品のことに馴染みのない方に、正常細胞ががん細胞に変貌する仕組み、抗がん剤ががん細胞を阻止する仕組みを理解していただけるようにします。抗がん剤の発見に情熱を込めた研究者にもスポットをあてながらお話しします。