第64回 知の拠点セミナー

「講演1:ニュートリノ!とピラミッド?/講演2:電子線加速器で探る陽子大きさの謎」

日時平成29年7月21日(金) 18時~20時00分(※17時30分から受付開始)
場所京都大学東京オフィス
(東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階: アクセスマップ
プログラム18:00-19:00 講演1 「ニュートリノ!とピラミッド?」  概要はこちら
            中村 光廣(名古屋大学未来材料・システム研究所 教授)
19:00-20:00 講演2 「電子線加速器で探る陽子大きさの謎」  概要はこちら
            須田 利美(東北大学電子光理学研究センター  教授)

講演1 「ニュートリノ!とピラミッド?」
  中村 光廣(名古屋大学未来材料・システム研究所 教授)

 ニュートリノ研究とピラミッド透視をつないでいるアナログでアナクロで最先端?な写真フィルム:原子核乾板の話をします。


講演2  「電子線加速器で探る陽子大きさの謎」
  須田 利美(東北大学電子光理学研究センター 教授)

 今回の知のセミナーでは、最も軽い原子核である陽子の大きさにまつわる謎についてお話しします。

 一個の陽子と一個の電子で構成される水素原子は、最も単純な構造を持つ最も軽い元素です。138億年前のビッグバン直後に大量に作られました。20世紀に大きく花開いた現代物理学にとって、水素原子とその原子核である陽子は重要な研究対象でした。水素原子の研究で量子力学と呼ばれる新しい物理分野が確立しました。その後、陽子内部の研究により陽子はクオークと呼ばれる素粒子で構成されていることが分かり、陽子は「素粒子」の座を追われることになりました。

 このように現代物理学の発展と共に、水素原子や陽子についての私たちの理解は大変進みましたが、陽子のもつ自転(スピン)の起源や陽子は崩壊しないのか(壊れないのか)など、未だにいくつかの謎に包まれています。 今回のお話しは、謎の一つである陽子の大きさ(半径)についてです。大きさは最も基本的な物理量ですが、電子とμ粒子(電子より200倍重い素粒子)で陽子の大きさを測定するとその大きさが違って見えることが分かりました。これは「陽子半径の謎」と呼ばれ、有名な科学誌である「サイエンス」や「ネイチャー」の表紙を飾る事態になっています。

 現代物理学の金字塔の一つである「標準理論」によると、電子とμ粒子は質量こそ違うものの同じ種類の素粒子と考えられているので、この不一致は標準理論の「ほころび」に関連するとの指摘も有り、現代物理学上の大きな問題の一つと考えられるようになりました。

 この謎の解明には今まで以上に正確な陽子半径測定の重要です。私たちは電子を陽子にぶつけて散乱させる実験を通じて、世界最高精度の陽子半径再測定に挑んでいます。全国共同研究・共同利用拠点である私たちの研究センター(東北大学・電子光センター)には、ユニークな特徴を持つ電子加速器があり、現在全国の多くの研究者に利用されています。私たちは当センターの電子加速器の特徴を最大限に生かし、世界の誰にもまねのできない測定を通じて、陽子半径の謎に迫る研究を進めています。

 今回の知の拠点セミナーでは、最も軽い原子核である陽子の大きさの謎についてお話ししますが、もし時間があれば最も重い元素(原子核)である「ニホニウム」についてもお話ししたいと思っています。どうぞ、お楽しみに。