第59回 知の拠点セミナー

「講演1:農作物デザインの今昔物語/講演2:ガーナの巨大ネズミは野生動物を救えるか?」

日時平成29年2月18日(土) 14時30分~17時00分
場所筑波大学東京キャンパス文京校舎1階「134講義室」
(東京都文京区大塚3-29-1: アクセスマップ
プログラム14:30-15:40 講演1 「農作物デザインの今昔物語」  概要はこちら
            江面 浩(筑波大学遺伝子実験センター センター長・教授)
15:50-17:00 講演2 「ガーナの巨大ネズミは野生動物を救えるか?」  概要はこちら
            村山 美穂(京都大学野生動物研究センター  副センター長・教授)

講演1 「農作物デザインの今昔物語」
  江面 浩(筑波大学遺伝子実験センター センター長・教授)

我々の食料は、絶え間ない農作物の品種の改良(デザイン)と生産技術の改良によって確保されてきた。従来の品種改良では、改良したい元品種と有用形質(性質)をもった品種とを交配し、元品種に有用形質を取り込む手法が取られる。この方法では、有用形質以外の形質も導入され、それらを排除するのに時間を要し、品種開発の期間を長く煩雑にしている。主要な農作物のモデル品種・系統のゲノム解読研究、それに続く多様な品種・系統の比較ゲノム研究、さらには従来から進められてきた重要育種形質発現の分子機能解明の研究から、自然突然変異が栽培・品種改良過程の中で固定・蓄積され、現在の多様な農作物が出来上がってきたことが明らかになった。近代作物に残されてきた有用遺伝子変異を元品種に直接再現できれば、効率的な改良が可能になる。近年、ゲノム編集技術という遺伝子を高精度で書き換える技術が開発され,有用変異を人為的に創成する技術として世界的に注目されている。本講演では、トマトを事例に、従来の品種改良技術とゲノム編集技術による品種改良の高度化について紹介する。


図1 実験トマトのマイクロトム
図2 ピンポイント変異で花粉がなくて実がつくようになる


図3 トマトはエチレン受容体のピンポイント変異で日持ち性が劇的に向上する


講演2 「ガーナの巨大ネズミは野生動物を救えるか?」
  村山 美穂(京都大学野生動物研究センター 副センター長・教授)

ガーナは野口英世の終焉の地であり、日本との縁は深い。ガーナでは、グラスカッターという体重7キロほどの食用齧歯類がいる。私たちはこの動物の家畜化を進めることにより、動物性タンパク質の摂取を確保すると同時に野生動物の狩猟を減らし環境を保全するプロジェクトを進めている。グラスカッターは在来動物で、ガーナの気候風土に適しており、また肉はアフリカの広い地域でたいへん好まれている。飼育の行われていなかったガーナ北部に動物を配布して飼育法の実践を行い、日本に研究者を招聘して遺伝子解析、感染症検査、食品加工などのトレーニングを行った。現在は約200頭が飼育されている。ガーナ起点の国際協力の形を紹介したい。