第57回 知の拠点セミナー

日時平成28年12月17日(土) 14時30分~17時00分
(※14時から受付開始のため、14時以降に東京駅直結の地下1階オフィスエントランス(新丸の内ビル前)にお越しください。)
場所京都大学東京オフィス
(東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階: アクセスマップ
プログラム14:30-15:40 講演1 「新規接合法によるCO2排出量やレアメタルの問題を解決する高炭素鋼社会の実現」  概要はこちら
            藤井 英俊(大阪大学接合科学研究所 教授)
15:50-17:00 講演2 「人獣共通感染症克服に向けたアプローチ」  概要はこちら
            澤 洋文(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 副センター長・教授)

講演の詳細はこちらでご覧いただけます (Yomiuri Onlineのページを開きます)

講演1 「新規接合法によるCO2排出量やレアメタルの問題を解決する高炭素鋼社会の実現」
  藤井 英俊(大阪大学接合科学研究所 教授)

鉄鋼材料中の炭素量が増加すると強度は増加するが、例えば自動車用鋼板では、0.15wt%を超える炭素含有した鉄鋼材料は用いられない。プレス成形性が悪くなるなどの他の要因もあるが、最大の理由は「接合」が困難となることである。これは、接合の最終過程である冷却中に同素変態を起こし、脆いマルテンサイトという相が形成するためである。この問題を解決するために、筆者らの研究グループでは、最も低い変態温度のA1点(726℃)以下で接合する技術を開発した。これによって、マルテンサイト変態は生じず、鋼の炭素量に依存することなく接合が可能となり、強度と靭性に優れた構造物が得られるようになった。
 一方、鋼の製造法について考えると、まず、酸化鉄である鉄鉱石にコークスを混ぜて、炭素量がおよそ4%の銑鉄を製造する。前述のように、ここから0.15 wt%以下、即ちほぼ0 wt%まで炭素量を低下させて鋼を製造する。この際、転炉という炉で酸素を吹きかけながら炭素(C)を除去するため、CO2が大量に発生することは容易に発生することが想像される。仮に、身の回りの種々の構造物において1 wt%や2 wt%の炭素を含む鋼が幅広く使用され、4 wt%→0 wt%の過程を4 wt%→1 wt%あるいは4 wt%→2 wt%とすることができれば大幅にCO2の発生量を減らせることが容易に想像できる。加えて、炭素によって鋼が高強度化されれば、高価な合金元素の添加も不要となる。




講演2 「人獣共通感染症克服に向けたアプローチ」
  澤 洋文(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 副センター長・教授)

近年、インフルエンザ、エボラウイルス病、中東呼吸器症候群(MERS) 、結核などの新興・再興感染症が世界各地で発生し、人類を脅かしています。これらは全て、自然界の野生動物に寄生し、被害をおよぼさずに存続してきた微生物が、時に家畜、家禽そしてヒトに侵入、伝播して感染症をひきおこす人獣共通感染症です。近年の著しい地球環境の変化は、自然界の生物生態系を攪乱し、野生生物と人間社会の境界消失をもたらしました。その結果、病原体が家畜、家禽と人に伝播する機会が増え、人獣共通感染症の多発を招いています。更に、貿易のグローバル化とボーダーレスの国際交流が進み、食肉、飼料、野生動物やペットの輸入と旅行者の増加に伴って、人獣共通感染症は国境を越えたグローバルな問題となっています。このような状況において,人獣共通感染症対策は発生国のみならず、国際社会が協同して進めなければなりません。人獣共通感染症の先回り予防策は、自然界の野生動物宿主を特定し、伝播経路を解明してはじめて可能になります。人獣共通感染症リサーチセンターは、自然界の微生物の検出技術、宿主域、生態、病原性、および感染症の発生予測と予防・制圧方法を総括的に研究開発している研究機関です。本講演では私共の実施している人獣共通感染症克服に向けたアプローチについて紹介させて頂きます。