第26回 知の拠点セミナー

「植物のミネラル輸送 ―我々の健康にかかわるミネラルがどのように土から輸送されるのか?」

日時平成25年11月15日(金) 17時30分~
場所京都大学東京オフィス
(東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟27階: アクセスマップ
講演者馬 建鋒
岡山大学 資源植物科学研究所 教授)
講演の詳細はこちらでご覧いただけます (Yomiuri Onlineのページを開きます)

 我々が生きていくために必要なミネラルは植物を介して土に由来します。その一方で、土壌汚染などで有害なミネラルも植物に集積されてしまい、我々の健康に深刻な影響を与えます。私どもは土壌中の各種ミネラルがどのように最終的に作物の可食部分に輸送されるのかに興味を持ち、研究を進めてきております。
 ミネラルの輸送には細胞膜を横切る膜タンパク質(トランスポーター)が必要で、我々はこれまでに様々なトランスポーターの同定を行ってきました。本セミナーでは、ケイ酸とカドミウムの輸送体を例に紹介します。ヒトにとってケイ素は骨の形成に関係すると言われています。土壌中のケイ酸は根に存在する2種の異なるトランスポーターによって吸収されます。また地上部では、別のトランスポーターによって各組織へ配分されます。特に生殖成長期において穂へのケイ酸の優先的配分が重要ですが、それは節で働く3種類の異なるトランスポーターの協同作業によって成し遂げられます。一方、イタイイタイ病の原因物質であるカドミウムについては3種類の異なるトランスポーターがイネのカドミウム集積に関与することが最近明らかとなりました。いずれのトランスポーターも元々必須金属であるマンガンや亜鉛を運ぶために必要なものであるため、カドミウムを減らそうとすると生育にも影響を与えてしまう難しい点があります。今後カドミウムのみを低減させる方策についても議論したいと思います。


図1 イネの根の外皮と内皮細胞に局在する2種のケイ酸輸送体


図2 イネのカドミウム吸収の主要な輸送体OsNramp5の組織局在