第12回 知の拠点セミナー

「チェルノブイリと福島:地域研究の挑戦」

日時平成24年9月21日(金) 17時30分~
講演者家田 修
北海道大学 スラブ研究センター 教授)

 福島原発事故はいまも10万人を越える避難民問題を抱え、短期的にも長期的にも解決の道筋はまったく描けていない。どこまでの避難が妥当なのか。帰還はそもそも可能なのか。もし可能なら、どうすれば可能なのか。帰還にはどれくらいの時間を要するのか。避難者の将来はどうなるのか。いったい実情はどうなっているのか。数え上げたらきりがない問題の山また山である。
 他方、四半世紀前に起こったチェルノブイリ原発事故については、今回の事故後改めて注目を集めているが、放射能汚染地域としてのチェルノブイリはソ連の崩壊によりロシア、ウクライナ、ベラルーシの三国に分割され、事故後この地域がどのような歴史を歩んできたのか、なかなか全体像が描きにくい状態にある。放射能汚染、子供への健康被害、土壌の再生など、いろいろな角度から調査研究がなされてきたが、地域としての被災、地域の崩壊、地域の再生という総合的な視野からチェルノブイリに取り組んだ研究はない。
 しかし、福島の将来を考えるとき、地域の視点が不可欠となっている。もっとも、どのように原発事故後の地域に迫るのか、その方法自体が地域研究にとっての挑戦である。今回のセミナーでは、まずは現場から考えるという地域研究の本旨に基づいて、二つの地域における困難な原発事故問題に迫っていく。




飯舘村一般廃棄物最終処分場を仮仮置き場とする汚染土の山