第31回 知の拠点セミナー

「コメで感染症を予防する:そんなことが出来るの?」

日時平成26年4月18日(金) 17時30分~
場所京都大学東京オフィス
(東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟27階: アクセスマップ
講演者清野 宏
東京大学 医科学研究所 所長
東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター 教授
東京大学医科学研究所感染・免疫部門炎症免疫学分野 教授)
講演の詳細はこちらでご覧いただけます (Yomiuri Onlineのページを開きます)

腸管には「粘膜免疫システム」と呼ばれる生体にとって最大の防御機構が存在し、我々の体を守っています。それを反映するように腸管には沢山の免疫担当細胞が存在しており、腸管を標的とした「飲ませる(飲んで効く)ワクチン」開発は理にかなっている事になります。医学と農学と言う異分野の科学と技術が融合することにより、「コメ」をワクチンの生産体、貯蔵体そして送達体として応用し、「医療用コメ」として、コメを原薬とした「飲用ワクチンMucoRice(ムコライス)」開発の試みが進んでいます。皆さんが現在接種されている注射型ワクチンは感染予防に効果を発揮していますが、冷蔵保存の必要性、使い捨て型注射器・針の使用、接種時の不安・疼痛など課題もあります。特に冷蔵保存はワクチンを必要としている開発途上国では大きな問題です。また、使い捨て注射器・注射針の廃棄は医療用廃棄物として環境への問題が心配されます。それらの課題克服に向け、コメ型飲用ワクチンMucoRiceは「冷蔵保存・注射器・注射針不要」なワクチンとしても、その開発が期待されています。さらに、「医療用コメ」という新発想のもとでのMucoRice開発は、工学系の関与により、厳しい医薬品生産基準に適合する、GMP対応型閉鎖系栽培システムの開発にもつながります。MucoRiceはまさに異分野融合がもたらすイノベーションとして、世界の感染症コントロールに向けて新しい扉を開こうとしているのです。