第24回 知の拠点セミナー

「豊かな老いを求めて ―アジア・フィールド医学の現場から―」

日時平成25年9月20日(金) 17時30分~
場所京都大学東京オフィス
(東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟27階: アクセスマップ
講演者松林 公蔵
京都大学 東南アジア研究所 教授)

 1950 年には日本人の平均寿命は50 歳であり、65 歳以上の高齢者の割合は5%に過ぎませんでした。しかし現在、高齢者人口は23%、2030 年には総人口の1/3 を占めます。現在の日本では、平均寿命は80 歳をこえ、人生90 年型の世界となりました。人の“老い”が個人の問題をこえて社会として認識され、人の「老化」が科学や医学の問題としてとりあげられるようになったのは、近々、この50 年以内のことです。

 高齢者は、老化とともに多臓器に慢性の疾患をかかえることを避け得ませんが、病院の医療が高度に専門分化した結果、医師はその専門の臓器病変のみに関心を集め、それ以外の問題を顧みる余裕がないのも実情でもあります。

 その患者がどういうふうに暮らしており、どんな仲間や家族がいてどんなものを食べ、日常生活の上でどんな課題を抱えているのか、こういった問題は大病院中心の医療ではほとんどわかりません。種々の慢性疾患をかかえた高齢者のほんとうの姿は、あくまで生活の場である家庭や地域にあります。人の疾病や加齢のありさまは、自然環境の違いによって影響を受けるとともに、時代や文化環境によっても影響されます。したがって、ありのままの高齢者の医学的課題を捉えようとするならば、医療スタッフのほうが地域にでていって、さまざまな自然環境、文化的背景のなかで暮らしている高齢者と接する医学が必要と考え、私たちは、「フィールド医学」という領域を創出しました。

 本講演では、本邦の高齢者との比較のもとに、アジアの各地における高齢者の健康観と生き方、死生観などについて紹介したいと思います。

写真1:高知県の長寿運動教室参加者
 
写真2:平均年齢80歳の水中運動
 
写真3:ヒマラヤ高地で生活を営むひとびと 写真4:健診に集うブータン農村高齢者