第18回 知の拠点セミナー

「スマート・エイジング 〜脳を鍛えて健やかに生きる〜」

日時平成25年3月15日(金) 17時30分~
講演者川島 隆太
東北大学 加齢医学研究所 スマート・エイジング国際共同研究センター長、教授)

 スマート・エイジングは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」と定義されます。個人が高齢期を知的に成熟する人生の発展期として積極的に受容できるようにするためには、①脳を積極的に使う、②身体を積極的に動かす、③バランスのとれた栄養を摂る、④社会や他者と積極的に関わる、この4つの原則が肝心です。①の脳を積極的に使う習慣に関しては、認知心理学、脳機能解析学の知見より、我々は作動記憶訓練を提唱してきました。作動記憶訓練を自分のできるぎりぎりの難しさで続けることによって、大脳前頭前野の体積が増え、記憶力以外の能力も向上する転移効果が生じます。また個人の遺伝的素因(SNP)の違いにより、認知機能改善効果に違いがみられること、さらには動物実験によって、こうした訓練による脳の可塑性には遺伝子発現が関連することなどを明らかにしてきました。④のコミュニケーションに関しては、複数の脳活動の同時計測が可能な超小型の脳機能計測機器の開発により、コミュニケーションがうまくとれていると脳活動が他者の脳活動と同期する現象を発見し、コミュニケーションの質と量の定量化が可能ではないかと考え産学連携研究開発を推進しています(図参照)。